【スピンオフ企画】『夜明けの旅団』時代考証を大公開 ⑥(2019/01/10)


月刊「モーニング・ツー」(毎月22日頃発売)にて絶賛連載中の、片山ユキヲ氏が描くダークファンタジー漫画『夜明けの旅団』

第二次世界大戦中のヨーロッパを舞台に、“死霊”と呼ばれるリビングデッドとの戦いを描く本作は、ファンタジーでありながら時代考証にもこだわり、丁寧な「歴史描写」を続けています。

この作品の時代考証を務めるのが、かわぐちかいじ『ジパング』野田サトル『ゴールデンカムイ』髙橋ツトム『士道サンライズ』などに携わる歴史作家・時代考証家の後藤一信氏です。

本企画では、『夜明けの旅団』の原稿をチェックした後藤氏による「時代考証」を、インタビュー形式の記事で毎月公開していきます。




『夜明けの旅団』第10話を時代考証の視点でチェック!

——月刊「モーニング・ツー」2019年2号(2018年12月22日発売)に掲載されている、#10「In The Dark」をお読みになっての感想を、時代考証の視点から教えてください。

後藤 今月号の舞台となっているバイエルンの州都・ミュンヘンは、第二次世界大戦において重要な意味を持つ都市の一つです。「国家社会主義ドイツ労働者党(ナチ党)」発祥の地であり、ナチ党本部「褐色館(Braunes Haus)」が置かれ、「党運動首都(Hauptstadt der Bewegung)」と称されるなど、ナチ党、そして総統アドルフ・ヒトラーを象徴する都市でした。

ですので、第二次世界大戦が勃発すると、ドイツに敵対する「連合軍」はミュンヘンを爆撃し、猛攻撃を加えました。ミュンヘンを灰燼に帰すことで、ナチス・ドイツ打倒の明確な意思表示としようとしたのです。『夜明けの旅団』の劇中でミュンヘンの街が大きく破壊されているのは、このためですね。

この世界が絶望に包まれている理由として、死霊による殺戮のみならず、人間による破壊(戦争)という要因も大きなものを占めているのが、とても興味深い表現だと思います。






後藤 後半、物語は崩壊したビルから地下の下水道へと移りますが、下水道が激戦の舞台となることは、実は史実でも多々ありました。特に有名なのが、苛烈な都市戦闘が行われた「スターリングラード攻防戦」でしょう。ソ連邦総書記・スターリンの名を冠したスターリングラードは、ナチス・ドイツにおけるミュンヘンと同じく、第二次大戦期のソ連邦を象徴する都市でした。ドイツ軍および枢軸軍85万名、ソ連邦側120万名もの死傷者を出した「スターリングラード攻防戦」では、ソ連邦軍は、網の目のように伸びる下水道を使って神出鬼没のゲリラ戦を仕掛け、ドイツ軍を翻弄しました。






後藤 不気味な地下下水道は、『夜明けの旅団』のように多くの作品にインスピレーションを与えてきました。『レ・ミゼラブル』では主人公ジャン・バルジャンが少女コゼットの恋人マリユスを助けるためパリの下水道に身を潜め、個人的にも大好きなアンジェイ・ワイダ監督の映画『地下水道』では、第二次大戦末期の絶望と狂気がワルシャワの地下下水道を舞台に描かれました。家々からの排水・汚物で満ちた下水道……大都市の地下に人知れず作られた巨大迷宮「ラビリンス」は、作家のイマジネーションを刺激して止まないのでしょう。片山先生が、ミュンヘンの迷宮をどう料理するのか、今から来月号が楽しみです。



時代考証家・後藤一信氏のお墨付き、
最新単行本②巻は2月22日(金)発売です!

来月の「時代考証」も、乞うご期待!




後藤一信(ごとう・かずのぶ)

軍事関係を得意とする歴史作家・時代考証家。監修・時代考証などで携わった作品は、『ジパング』(かわぐちかいじ)、『ゴールデンカムイ』(野田サトル)、『士道サンライズ』(髙橋ツトム)、『アルキメデスの大戦』(三田紀房)、『決闘裁判』(宮下裕樹)、『夜明け後の静』(石川秀幸)、『群青戦記 グンジョーセンキ』(笠原真樹)、『新説!さかもっちゃん』(柳内大樹)など多数。プレイステーション版『沈黙の艦隊』では監督を務めた。
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プロフィール

片山ユキヲ(かたやま・ゆきを)
兵庫県生まれ。代表作に、『花もて語れ』『ふろがーる!』(以上、小学館) 『空色動画』(講談社)など。

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