【NEWS】『夜明けの旅団』の「時代考証」を公開するスピンオフ連載がモアイで始動!(2018/05/18)

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【スピンオフ企画】『夜明けの旅団』時代考証を大公開 ③(2018/07/05)


月刊「モーニング・ツー」(毎月22日頃発売)にて絶賛連載中の、片山ユキヲ氏が描くダークファンタジー漫画『夜明けの旅団』

第二次世界大戦中のヨーロッパを舞台に、“死霊”と呼ばれるリビングデッドとの戦いを描く本作は、ファンタジーでありながら時代考証にもこだわり、丁寧な「歴史描写」を続けています。

この作品の時代考証を務めるのが、かわぐちかいじ『ジパング』野田サトル『ゴールデンカムイ』髙橋ツトム『士道サンライズ』などに携わる歴史作家・時代考証家の後藤一信氏です。

本企画では、『夜明けの旅団』の原稿をチェックした後藤氏による「時代考証」を、インタビュー形式の記事で毎月公開していきます。




『夜明けの旅団』#4「Free Bird」を時代考証の視点でチェック!

——月刊「モーニング・ツー」2018年8号(6月22日発売)に掲載されている、#4「Free Bird」をお読みになっての感想を、時代考証の視点から教えてください。

後藤 今回の見所の一つは、21ページ目に登場する、パーカッション式の「コルトM1851ネイビー」次弾装填シーンでしょう!






後藤 これに先立つ14ページ目では、連合軍の補給担当官とハニーバニーのやり取りが描かれており、銀地金を溶かして弾頭を自作する様子までもが描かれています。はっきり言って、私は、自分で弾頭を作る漫画主人公を見たことがありません。それどころか、パーカッション式の次弾装填をキチンと描いた作品も非常に少ない。ここまでのコダワリは本当に銃が好きな人でなければ描けないと断言できますね。






後藤 以下余談ですが、米国人作家スティーヴン・ハンター氏は、自著で伝説の狙撃手、ボブ・リー・スワガーに精密狙撃用銃弾を作らせていますが、非常にマニアックな描写となっています。日本人では伝説のハードボイルド作家・大藪春彦氏が同じように登場人物に銃弾を自作させています。ちなみに大藪氏は屈指のガン・マニアとして名高く、拳銃不法所持容疑により逮捕された過去を持ちます。

ガン・アクションに徹底的にこだわることで知られる名優クリント・イーストウッドも、パーカッション式拳銃の劇中での次弾装填には苦慮しているんですよ。とにかく面倒で、全弾装填するには熟練者でも5分ほどを要してしまう。その間、どうしてもドラマが止まってしまうんです。

ちなみに、彼は監督・主演映画『ペイルライダー』にて、パーカッション式の「レミントンM1858ニューアーミー」を使用していますが、手間の掛かる次弾装填の隙をカバーするため、予め装填された予備輪胴を多数持ち、撃ち終わった次の瞬間、輪胴そのものを入れ替えることで素早い連続射撃を可能とし、立ち塞がる敵を次々と撃ち倒していました。この輪胴交換に要する時間は熟練者なら約15秒。米国南北戦争でも、官支給品であった「M1851」より、私物の「M1858」を使用する兵士が多かったようです。

スティーヴン・キング原作の幻想文学『ダーク・タワー』の主人公、伝説のガンスリンガー、ローランド・デスチェインも、「レミントンM1858ニューアーミー」のカスタム改造モデルを使用しており、劇中で輪胴交換による素早い次弾装填を行っています。

余談が長くなりましたが……。つまり、ハニーバニーの銃はそれくらい実戦では扱いにくい銃だということを理解していると、彼のガン・アクションシーンも、また違った見方ができるのではないかと思います。弾頭自作シーンが、あまりにマニアックで濃い描写なので、つい熱く語ってしまいました。

次の見所は、19ページ目で描かれた個人用戦闘糧食(C-rationシー・レーション)です。戦闘糧食は様々な種類がありますが、ここに描かれているのは最も一般的な、最前線でのリアルな食事内容。ちなみに、あえて突っ込むのなら、劇中ではビスケットが紙包みとなっていますが実際には保存食の乾パンと同じく缶詰で、缶切りで開封しなければなりませんでした。とはいえ、最前線にまでチョコレートを運べる米軍の圧倒的補給能力が、さりげなく表現されていてとても良いです。第二次世界大戦末期のドイツでは、おが屑(木の削りかす)・麦わら・ジャガイモなどを混ぜた代用パン、干し鱈と豚肉を混ぜたデデ肉、たんぽぽ・大麦・大豆などを煎った代用コーヒーなどが主な食料で、それらさえも手に入らないことも多かったので、米軍の糧食事情とは隔絶の感があります。

ジョニーボーイのチョコを食べる顔も実に微笑ましくて印象的ですね。






後藤 女性の社会進出の象徴でもあった婦人陸軍部隊が登場する、9ページ目からのシーンにも大いに注目したいです。史実で言えば、第二次世界大戦中、婦人陸軍部隊が最前線に配備されたことはありませんでした。女性軍人を男性軍人の中で活動させるのは様々な面で困難が付きまとうからです。ですが「死霊」の脅威は、女性軍人を最前線まで駆り出さねばならぬほど、米国を追い詰めていたということでしょうね。






——ありがとうございます。来月もよろしくお願いいたします!



今月の後藤氏の指摘も、
8/23発売の単行本①巻で
加筆修正予定です!

来月の「時代考証」も、乞うご期待!




後藤一信(ごとう・かずのぶ)

軍事関係を得意とする歴史作家・時代考証家。監修・時代考証などで携わった作品は、『ジパング』(かわぐちかいじ)、『ゴールデンカムイ』(野田サトル)、『士道サンライズ』(髙橋ツトム)、『アルキメデスの大戦』(三田紀房)、『決闘裁判』(宮下裕樹)、『夜明け後の静』(石川秀幸)、『群青戦記 グンジョーセンキ』(笠原真樹)、『新説!さかもっちゃん』(柳内大樹)など多数。プレイステーション版『沈黙の艦隊』では監督を務めた。
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プロフィール

片山ユキヲ(かたやま・ゆきを)
兵庫県生まれ。代表作に、『花もて語れ』『ふろがーる!』(以上、小学館) 『空色動画』(講談社)など。

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  • 夜明けの旅団 (1)

    モーニング・ツー

    夜明けの旅団 (1)

    片山ユキヲ

    発売日:2018/08/23
    定価:本体610円(税別)

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