【スピンオフ企画】『夜明けの旅団』時代考証を大公開 ⑫(2019/08/07)


月刊「モーニング・ツー」(毎月22日頃発売)にて絶賛連載中の、片山ユキヲ氏が描くダークファンタジー漫画『夜明けの旅団』

第二次世界大戦中のヨーロッパを舞台に、“死霊”と呼ばれるリビングデッドとの戦いを描く本作は、ファンタジーでありながら時代考証にもこだわり、丁寧な「歴史描写」を続けています。

この作品の時代考証を務めるのが、かわぐちかいじ『ジパング』野田サトル『ゴールデンカムイ』三田紀房『アルキメデスの大戦』などに携わる歴史作家・時代考証家の後藤一信氏です。

本企画では、『夜明けの旅団』の原稿をチェックした後藤氏による「時代考証」を、インタビュー形式の記事で毎月公開していきます。




『夜明けの旅団』第17話を時代考証の視点でチェック!

——月刊「モーニング・ツー」2019年9号(7月22日発売)に掲載されている、 #17「Children of the Grave」をお読みになっての感想を、時代考証の視点から教えてください。

後藤 1ページ目のベンヤミンとミアの父親死霊のアップで、軍帽に徽章としてのトーテンコップ(髑髏)と、襟章には稲妻の様なルーン文字「S:シゲル」を2つ重ねた「SS」が見られます。






後藤 これは彼がナチスの武装親衛隊(Waffen-SS:ワッフェン エス エス)である事を意味しています。ナチスではルーン文字が多用されており、ナチスのシンボルマーク「ハーケンクロイツ」もルーン文字「S」を2つ重ねたものが原型と言われています。

実は、この武装親衛隊は、正確にはドイツの軍隊ではありません。ナチス党に忠誠を誓う私兵であり、いわば民間武装組織なのです。しかし、ナチス党、並びに党首アドルフ・ヒトラーへの厚い忠誠心から、通常の陸軍部隊では遂行不可能な過酷な任務に投入されていました。






後藤 強制収容所での収容者に対する過酷な労働、虐殺は、ドイツ国民には極秘でした。また、その統括や管理業務は、一般兵には決して任せられないものでした。

そこで武装親衛隊が、その任務に当たり、同時に人体実験などの悪逆の限りを尽くしていたのです。「死の天使」と呼ばれた親衛隊大尉ヨーゼフ・メンゲレ医師は、収容所の囚人を用いた人体実験を繰り返し、非道の限りを尽くしました。例えば、囚人を極寒や大量出血などの極限状態に置き観察したり、有害物質や病原体を注射し観察したり、双子を用いて人工結合双生児の創造などの数々の醜悪な実験を繰り返したといいます。実際に、メンゲレの「双子はどこだ」と叫ぶ声が収容所に響き渡った、と証言する生存者の記録も残っています。9ページ目に白衣と聴診器を付けた武装親衛隊員の死霊が出てきます。死霊たちがいたと思われる強制収容所で行われていた残虐な行為が、ここから想像できますね……。






後藤 また、11ページ目に登場する新キャラクター・アーモンの鎌にも注目したいです。






後藤 主武器としている「鎌」は、東欧では古くから「刈り取るもの」の象徴とされ、ここから「死神」「死」の象徴とされました。西洋の死神が鎌を持っているのは魂を刈り取るための道具としてです。また、死者を埋葬する際には、万が一死者がよみがえった場合に自動的にその首を切り落とすように、首元に鎌が立てて置かれました。本作でも、まさにそのまま首を刈り取っていますね。これまで白兵戦用の武器は、ジョニーボーイの「銀の義歯」のみだったので力強い援軍登場となるでしょう。






後藤 今回の銃撃戦で、弾丸製造可能なハニーバニーの「コルトM1851」以外、ほぼ残弾ゼロに近い状態になったかと思います。非常に厳しい状況ですが、心の絆はこれまでの何倍も強固になった一行の旅を見守りたいと思います。



時代考証家・後藤一信氏のお墨付き、
待望の単行本③巻は8/23(金)発売!

来月の「時代考証」も、乞うご期待!




後藤一信(ごとう・かずのぶ)

軍事関係を得意とする歴史作家・時代考証家。監修・時代考証などで携わった作品は、『ジパング』(かわぐちかいじ)、『ゴールデンカムイ』(野田サトル)、『士道サンライズ』(髙橋ツトム)、『アルキメデスの大戦』(三田紀房)、『決闘裁判』(宮下裕樹)、『夜明け後の静』(石川秀幸)、『群青戦記 グンジョーセンキ』(笠原真樹)、『新説!さかもっちゃん』(柳内大樹)など多数。プレイステーション版『沈黙の艦隊』では監督を務めた。
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プロフィール

片山ユキヲ(かたやま・ゆきを)
兵庫県生まれ。代表作に、『花もて語れ』『ふろがーる!』(以上、小学館) 『空色動画』(講談社)など。

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    夜明けの旅団 (3)

    片山ユキヲ

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    夜明けの旅団 (2)

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