【スピンオフ企画】『夜明けの旅団』時代考証を大公開 ⑩(2019/06/03)


月刊「モーニング・ツー」(毎月22日頃発売)にて絶賛連載中の、片山ユキヲ氏が描くダークファンタジー漫画『夜明けの旅団』

第二次世界大戦中のヨーロッパを舞台に、“死霊”と呼ばれるリビングデッドとの戦いを描く本作は、ファンタジーでありながら時代考証にもこだわり、丁寧な「歴史描写」を続けています。

この作品の時代考証を務めるのが、かわぐちかいじ『ジパング』野田サトル『ゴールデンカムイ』三田紀房『アルキメデスの大戦』などに携わる歴史作家・時代考証家の後藤一信氏です。

本企画では、『夜明けの旅団』の原稿をチェックした後藤氏による「時代考証」を、インタビュー形式の記事で毎月公開していきます。




『夜明けの旅団』第15話を時代考証の視点でチェック!

——月刊「モーニング・ツー」2019年7号(5月22日発売)に掲載されている、#15「Into the Wild」をお読みになっての感想を、時代考証の視点から教えてください。

後藤 今話では、装備を整え、ミュンヘンから出発する様子が描かれていますね。総計5名で10日ほどの旅を想定しているという描写ですが、 17ページの旅立ちの場面を見ると、装備が少々心もとないように見受けられます。第二次世界大戦時、一般的な歩兵は2日分の糧食込みで総計40キロ前後の荷物を背負って行軍しました。たとえば、旧日本陸軍の場合は、白米6合、乾パン3食分に缶詰、乾燥味噌などの糧食と、容量1リットルの水筒、小銃と弾薬180発、外套、天幕、雨具、塹壕を掘るための小型ツルハシとシャベルなど基本35キロの装備を背負っていました。そこに重機関銃手たちの予備弾薬も背負うと、総計40キロを遙かに超えたようです。






——確かに兵士の行軍装備と比べると、かなり彼らは軽装ですね。ただ作中では、ヨーロッパ戦線は停戦状態となっており、ナチスなど一部の人間を除くほとんどの人類は「対死霊」を一番に考えているため、軍と軍との戦闘を想定した装備は必要ないというニュアンスです。武器や食料は道中で補給しながら旅を続けたほうが、効率も良いだろうなと。

後藤 なるほど。確かに、死霊の出ない日中は自由に移動ができるわけですし、軍隊的な装備は必要がなさそうですね。

——ちなみにですが、もしミュンヘンからノイシュヴァンシュタイン城へ向かうにあたり今後一切の補給ができないと仮定したら、軍事専門家の後藤さん的には、先ほどご指摘いただいた装備の他に、どんなものを持つべきだと思いますか?

後藤 毛布ですね。たとえば、過酷な戦場で闘う特殊部隊は、マットレスなどの夜具に非常に気を遣います。気持ちよく眠れるかどうかで疲労の回復度が大きく変わりますので。余談ですが、最近の軍隊ではエアクッション式の夜具が高評価と聞きます。あとは、当時の欧州は水が悪いことでも有名ですので、各自飲料に適した軟水を携帯しても良いかもしれません。

——ありがとうございます。彼らの旅を「装備」という視点で読み解くのも面白いですね! 他に、気になった描写はありますか?

後藤 これは素晴らしかった点ですが、今回個人的に最も印象に残ったのは 、20ページ目に描かれた、世界初の実用弾道ミサイル「報復兵器第2号(V2)」です。天才ロケット技師ヴェルナー・フォン・ブラウンによって開発された「V2」は、当時の科学技術力の粋を集めて作られ、弾頭に重量1トンの高性能火薬を搭載、音速の4倍以上の速度で飛来し、これを迎撃することは当時の技術では不可能という超兵器でした。戦後、米・ソはドイツ進駐時に、競ってドイツ人の科学技術者を自国へと招きました。特にロケット関係の技術者争奪戦は激しく、冷戦はここから始まったと言っても過言ではありません。そして、そんな超兵器が、死霊との予想外の戦いでは出番がなかったのか、打ち捨てられているという描写に、大きな悲哀が漂っていて非常に面白かったです。







時代考証家・後藤一信氏のお墨付き、
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来月の「時代考証」も、乞うご期待!




後藤一信(ごとう・かずのぶ)

軍事関係を得意とする歴史作家・時代考証家。監修・時代考証などで携わった作品は、『ジパング』(かわぐちかいじ)、『ゴールデンカムイ』(野田サトル)、『士道サンライズ』(髙橋ツトム)、『アルキメデスの大戦』(三田紀房)、『決闘裁判』(宮下裕樹)、『夜明け後の静』(石川秀幸)、『群青戦記 グンジョーセンキ』(笠原真樹)、『新説!さかもっちゃん』(柳内大樹)など多数。プレイステーション版『沈黙の艦隊』では監督を務めた。
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プロフィール

片山ユキヲ(かたやま・ゆきを)
兵庫県生まれ。代表作に、『花もて語れ』『ふろがーる!』(以上、小学館) 『空色動画』(講談社)など。

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