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【スピンオフ企画】『夜明けの旅団』時代考証を大公開 ①(2018/05/18)


月刊「モーニング・ツー」(毎月22日頃発売)にて絶賛連載中の、片山ユキヲ氏が描くダークファンタジー漫画『夜明けの旅団』

第二次世界大戦中のヨーロッパを舞台に、“死霊”と呼ばれるリビングデッドとの戦いを描く本作は、ファンタジーでありながら時代考証にもこだわり、丁寧な「歴史描写」を続けています。

この作品の時代考証を務めるのが、かわぐちかいじ『ジパング』野田サトル『ゴールデンカムイ』髙橋ツトム『士道サンライズ』などに携わる歴史作家・時代考証家の後藤一信氏です。

本企画では、『夜明けの旅団』の原稿をチェックした後藤氏による「時代考証」を、インタビュー形式の記事で毎月公開していきます。




『夜明けの旅団』#2「The Unforgiven」のココが凄い!

——月刊「モーニング・ツー」2018年6号(4月21日発売)に掲載されている、#2「The Unforgiven」をお読みになっての感想を、時代考証の視点から教えてください。

後藤 まず第一に、冒頭に登場する「フォルクスワーゲン タイプ82(キューベルワーゲン)」の描写が図抜けています。複雑なボディ形状を見事に描ききり、扉絵では「タイプ82」の特徴であるバケットシートやダッシュボードも完璧に描かれています。実に素晴らしい!






後藤 次に、電柱に吊された男の首から提げられた札に書かれたドイツ語「Der roten Bestien!(赤い獣)」も、当時の共産主義者弾圧を分かりやすく刺激的に描けています。ドイツ人から迫害された彼ですが、死霊パペットは何の差別もなく万人に平等に接します。






後藤 それから、ハニーバニーが「モーゼルC96(モーゼルミリタリー)」を発射するシーンも大注目です。射撃後に排莢はいきょうされる「7.63╳25mmマウザー弾」の空薬莢からやっきょうの形が完璧です! 特徴的な先端に向けて口径を絞るライフル弾形状がキチンと描かれています。また、ジョニーボーイが勝手に「モーゼル」を持ち出すシーンでは、コッキングピースをキチンと引いて射撃準備を整える様子が描かれています。ホントに芸が細かい!








後藤 そして、「このモーゼルC96」と対をなす拳銃が第1話から登場している「コルト1851ネイビー」。こちらはパーカッション式の旧式で、銃身下に付属するローディングレバーを用いて輪胴りんどう薬室内に直接、弾頭・炸薬さくやくを装填したら後部ニップルに雷管を装着、ようやく発射準備が完了するというシロモノ。当然、撃ち尽くしたら、一発ずつ手作業で再装填しなければなりません。こんな百年近く前の、旧式も旧式、実包登場以前の骨董拳銃を、命を預ける相棒に選んだハニーバニーは何と浪漫溢れる男なのでしょう! そして、この「コルト1851」を細部(18ページ目6コマ目では、非常に特徴的な輪胴後部ニップル部分、コッキングされた撃鉄の撃針まで描かれています)まで描写するところに、片山先生の強い“コダワリ”を感ぜざるを得ません! ヴンダバー(Wunderbar:素晴らしい)! ヘル・片山!








『夜明けの旅団』#2「The Unforgiven」のココが“違う”!

——では逆に、時代考証の視点から、史実とは違う部分や、描写がおかしい部分はありましたか?

後藤 まずは些細なツッコミですが、1ページ目1コマ目の「フォルクスワーゲン タイプ82」の前席・後席共にドアノブが描かれていません。






後藤 次に、26ページ目6コマ目、描き文字で「ジャー…」とありますが、ここは「バシャバシャ」とした方が良いと思います(溜めてあった水で浸し洗い)。おそらく水道(流水)で洗っている描写かと思いますが、水道は浄水場が機能していないと利用できません。浄水場は大電力を要するので、重要戦略都市のみに給水(それすらも滞りがち)、と言うのが戦争末期のドイツの現状です。戦場となっている街、及び田舎では井戸水が基本で、それすらも困難な場合も多いです。






後藤 それから、37ページ目4コマ目の「コルト1851」(左)と「モーゼルC96」(右)の大きさに少々、違和感を感じました。「Colt 1851 Navy Revolver」の全長は 330.2mm(重さ:1130g)、「Mauser C96」の全長は 312mm(重さ:1200g)。「モーゼル C96」は、一回り大きくした方が良いように思えます。






後藤 最後に、52ページ目4コマ目、左から2人目の兵士のヘルメットに「髑髏マーク」が描かれていますが、少々やりすぎな気がします。死霊が溢れる世界においても、なお軍隊としての規律を守り続けるナチスの兵隊であれば、こうした独自のペイントは出来ないはずです。






——ありがとうございます。来月もよろしくお願いいたします!



今月の後藤氏の指摘は、
8月23日発売の単行本①巻では
全て加筆修正予定です!

来月の「時代考証」も、乞うご期待!




後藤一信(ごとう・かずのぶ)

軍事関係を得意とする歴史作家・時代考証家。監修・時代考証などで携わった作品は、『ジパング』(かわぐちかいじ)、『ゴールデンカムイ』(野田サトル)、『士道サンライズ』(髙橋ツトム)、『アルキメデスの大戦』(三田紀房)、『決闘裁判』(宮下裕樹)、『夜明け後の静』(石川秀幸)、『群青戦記 グンジョーセンキ』(笠原真樹)、『新説!さかもっちゃん』(柳内大樹)など多数。プレイステーション版『沈黙の艦隊』では監督を務めた。
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プロフィール

片山ユキヲ(かたやま・ゆきを)
兵庫県生まれ。代表作に、『花もて語れ』『ふろがーる!』(以上、小学館) 『空色動画』(講談社)など。

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