【スピンオフ企画】『夜明けの旅団』時代考証を大公開 ⑭(2019/10/11)


月刊「モーニング・ツー」(毎月22日頃発売)にて絶賛連載中の、片山ユキヲ氏が描くダークファンタジー漫画『夜明けの旅団』

第二次世界大戦中のヨーロッパを舞台に、“死霊”と呼ばれるリビングデッドとの戦いを描く本作は、ファンタジーでありながら時代考証にもこだわり、丁寧な「歴史描写」を続けています。

この作品の時代考証を務めるのが、かわぐちかいじ『ジパング』野田サトル『ゴールデンカムイ』三田紀房『アルキメデスの大戦』などに携わる歴史作家・時代考証家の後藤一信氏です。

本企画では、『夜明けの旅団』の原稿をチェックした後藤氏による「時代考証」を、インタビュー形式の記事で毎月公開していきます。




『夜明けの旅団』第19話を時代考証の視点でチェック!

——月刊「モーニング・ツー」2019年11号(9月20日発売)に掲載されている、 #19「Assault Attack」をお読みになっての感想を、時代考証の視点から教えてください。

後藤 物語が大きく動いた今話。第一の注目点は、やはり物語の舞台となる「ノイシュヴァンシュタイン城」です。






後藤 この城は、第4代バイエルン国王ルートヴィヒ2世が、王位についていた19世紀後半に、幼き頃からの中世への憧れを城という形で具現化するために建設したものです。外見こそ伝統的な古城の佇まいを模していますが、劇中でも語られている通り、実は鉄筋コンクリート・モルタル製の近代工法で作られています。更に、古城なら必ず存在するキリスト教の聖堂や、代々の墳墓などの宗教施設もありません。全く新たに建設された“なんちゃって古城”である事が分かりますね。これは、日本で言う所の“城郭風”建築物で、「千葉県立関宿城博物館」、「熱海城」、「滋賀県立琵琶湖文化館」などの観光施設のような、近代建築物なのです。






後藤 ルートヴィヒ2世は“狂王”とも称されました。政事には全く関心を示さず、自らの心の渇望に突き動かされるまま放蕩を繰り返し、バイエルン王国の財政に莫大な損失を与えたのです。彼は他にも「ヘレンキームゼー城」、「リンダーホーフ宮殿」を建設し、さらには寵愛する作曲家リヒャルト・ワーグナーの作品を上演する為だけの専用劇場である「バイロイト祝祭劇場」を建設するなど、完全に“夢の世界の住人”でした。ちなみに、「バイロイト祝祭劇場」のこけら落としの初演作品は、かの『ニーベルングの指環』です。このオペラ作品は、フランシス・コッポラ監督の名作映画『地獄の黙示録』でも奏でられた『ヴァルキューレの騎行』が特に有名ですね。

——自分の趣味に傾倒した国王……。その後、彼はどうなったのですか?

後藤 これら雄大な建築物を建設する最中、彼の王国はプロイセン王国対オーストリア帝国の戦争で敗北したことで、領土割譲と多額の賠償金支払い義務を負い、大きな危機に陥りました。危機感を抱いた家臣らによって、ルートヴィヒ2世は逮捕・廃位され、その後、水死体となって発見されました。

——なんて悲惨な……。人間の「業(ごう)」を凝縮したような場所で、死霊との決戦が行われるわけですね。






後藤 ちなみに、実は「ノイシュヴァンシュタイン城」は未完成で、予定の半分以上が未着工となっています。余りにも莫大な費用を要するため、ルートヴィヒ2世の廃位と共に計画が凍結されてしまったのです。現在の城は完全に観光地化されており、土産物も多く売られています。しかし、夢の世界に生きた“狂王”は、当時「己が死後、ノイシュヴァンシュタイン城を破壊せよ」と遺言したといいます。“狂王”が自らの死と共に滅却しようとした城に、ジョニーボーイやハニーバニー、そして、アドルフ・ヒトラー、アッシェンバッハは何を思うのでしょうか……。



時代考証家・後藤一信氏のお墨付き、
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来月の「時代考証」も、乞うご期待!




後藤一信(ごとう・かずのぶ)

軍事関係を得意とする歴史作家・時代考証家。監修・時代考証などで携わった作品は、『ジパング』(かわぐちかいじ)、『ゴールデンカムイ』(野田サトル)、『士道サンライズ』(髙橋ツトム)、『アルキメデスの大戦』(三田紀房)、『決闘裁判』(宮下裕樹)、『夜明け後の静』(石川秀幸)、『群青戦記 グンジョーセンキ』(笠原真樹)、『新説!さかもっちゃん』(柳内大樹)など多数。プレイステーション版『沈黙の艦隊』では監督を務めた。
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プロフィール

片山ユキヲ(かたやま・ゆきを)
兵庫県生まれ。代表作に、『花もて語れ』『ふろがーる!』(以上、小学館) 『空色動画』(講談社)など。

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