阿部和重 取材・構成 門倉紫麻 阿部和重の漫画喫茶へようこそ!

マンガ好きの小説家・阿部和重さんが、
喫茶室でコーヒーを片手にマンガについてしゃべりまくる
【阿部和重の 漫画喫茶へようこそ!】

毎月100冊近く出版される「1巻」の中から、
モーニング編集部がチョイスした7冊を読んでいただき、
小説家ならではの、また映画に造詣が深い阿部さんならではの視点で
「マンガの現状」に迫ります!

(取材・構成=門倉紫麻)

【第93回】 終わりにあたって(2016/06/23)


阿部 とりあえずこれで、一つの締めということになりますが……いやあ、この連載は本当に勉強になりましたし、すごく楽しかったです。こういう仕事は20年間やってきて今までありませんでした。みなさんと一緒に話しながらやるというのもよかった。

漫画は、新しいものを常に追求しようとしているということがよくわかりました。また一方では、すごくベーシックな試み、ウェルメイドなものの追求も同時にやっている。一人一人の作家、編集者の方の努力が見えましたね。

——小説で同じ企画をやるのは……。

阿部 やりたくないです。絶対にいやです(笑)。

——それはご自分が書いているからということだけではなくて、小説というものがこういった企画に向いていない、という意味でもありますか?

阿部 うーん、あんまり小説を読みたくないんですよ(笑)。

阿部さん担当編集者 小説の世界では、漫画のように毎月7冊ものおもしろい作品は生まれていないと思います。

阿部 そうかもしれないですね。漫画は新陳代謝のスピードがすごく早い。だからみなさんニッチなところを攻めていくんですよね。何かあるはずだ、と。模索の度合いが、小説と全然違う。

——この連載を通して、ずっとそのこと……飽和状態の中でどう模索していけばよいのかを考えていったような気がします。

阿部 「ジャンル意識」という意味での意識の高さが、小説とはかけ離れている。文芸は、もちろんエンタメ小説と純文学とで濃淡はありますけれど、そこまで熾烈な何かの追及をしなくてもまだ許されて……はいないけれども、言葉だけで書かれているところが免罪符になっているようなところもあって。言葉だけを使うというのは一つのかせではあるんだけれど、言葉だけだからそこまでやらなくてもいいか、というある種の甘えも感じられるところがある、と僕は思うので。もちろん全員がそうというわけではないですけれど。

阿部さん担当編集者 「うまいな」という人はあまりいないですよね。

——小説でいう「うまい」というのはどういうことですか?

阿部 言葉って、催眠術みたいなものだと思うんです。

——催眠術ですか。

阿部 人とのコミュニケーションって言葉でするものですよね。なので小説というのは、言葉をどう組み合わせれば人の心の中に入っていけるか、ということの技術なんですよ。人心操作とも言えますよね。その技術がある人を「うまい」という。

——なるほど。漫画も言葉を使いますが、催眠術のようにはならないですか?

阿部 漫画にはやはり「絵」があるので、読者は一つの別の世界として受け止めることのほうが多いんじゃないかなと思います。ある種のパラレルワールドに近いような感触で見ている。映画も、スクリーンを通して別の世界を見ているような感覚に陥るじゃないですか。映画も漫画も「フレーム」があることによって、それが別の世界のことだと意識できるのだと思うんです。

——映画ならスクリーン、漫画ならコマですね。

阿部 でも小説の言葉には、フレームがない。言葉がどこでどう作用するかを、読者はコントロールできないでしょう。言葉は形がない、不定形なものですよね。見えているのか、見えていないのか……この、文学の可視性、不可視性というのは、僕が考えている問題でもあります。

——文学と漫画を比較してのお話も、すごくおもしろいですね。これで完全に終わり、ということではなく、ぜひまたお願いいたします!

阿部 こちらこそ! ぜひやらせてください。

——ひとまず2年間、ありがとうございました!

阿部 ありがとうございました!


『阿部和重の漫画喫茶へようこそ!』は
これにてひとまず連載終了です。
ご愛読ありがとうございました。

本連載の単行本化の予定は、
モーニング公式サイトにてお知らせします!
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プロフィール

阿部和重
阿部和重(あべかずしげ)
1968年山形県生まれ。2010年『ピストルズ』で谷崎潤一郎賞を受賞したほか、受賞歴多数。
『アメリカの夜』『インディヴィジュアル・プロジェクション』『ニッポニアニッポン』『シンセミア』など著書多数。近著に『Delux Edition』『□ しかく』など。
「ヤングマガジン」をこよなく愛するマンガ好き。「honto+」ではマンガ評「漫画覚書」を連載中。映画学校出身で、映画についての造詣も深い。

阿部和重オフィシャルサイト
阿部和重Twitter
阿部和重公式Facebookページ
門倉紫麻(かどくらしま)
漫画ライター。
1970年神奈川県生まれ。慶應義塾大学卒業。Amazon.co.jpエディターを経て、フリーライターに。「FRaU」「ダ・ヴィンチ」「レタスクラブ」などで主に漫画に関する記事の企画・執筆、コラムの連載を行う。
著書に、「ジャンプ」作家に漫画の描き方を聞く『マンガ脳の鍛えかた』、宇宙飛行士らへのインタビュー集『We are 宇宙兄弟 宇宙飛行士の底力』『We are 宇宙兄弟 宇宙を舞台に活躍する人たち』がある。

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