門倉紫麻 漫画家になるための戦略教室

熱意はある。努力もしている。「才能あるよ」とも言われた。
でも、なぜか漫画家になれない——。
そんな漫画家志望者のあなた。
熱意はあって当たり前。努力も言わずもがな。
才能は、確かにあったほうがいい。
でも、漫画家になるためには、それでは足りない
「戦略」が、必要なのです!
漫画ライター・門倉紫麻が、作家陣へのインタビュー、モーニング編集部への
潜入取材を敢行して探った、その戦略とは!?
どこよりも実践的な漫画教室、開校!!

【再録】 ちばてつや賞出身! 三田紀房さんインタビュー(1/3)(2015/08/16)

2013年に「モーニング」に掲載され話題を呼んだ、ちばてつや賞出身作家が新人時代から現在の活動までを語るシリーズ【あの人もちばてつや賞出身だった!】

掲載以来読む手段がありませんでしたが、貴重なインタビューは今でも有効なはずということで、ちばてつや賞35周年を記念し、この『戦略教室』にて再掲載することになりました! 第1弾の岩明均さんに続き、三田紀房さんが登場です!

ちばてつや賞に入選し、その翌年にはデビュー。型破りな弁護士・桜木が、落ちこぼれ生徒を東大に入れるべく奮闘する『ドラゴン桜』では、漫画ファンのみならず受験生やその親にまで影響を及ぼし、社会現象を巻き起こしました。現在は、投資家中学生たちを描く意欲作『インベスターZ』を連載中です。

全3回となるインタビューの第1回では、「オリジナリティも、新しさもいらない」と言い切る三田さんが、そう思うに至った経緯が明らかに!

写真=藤本和史



【第1回】 “新しいもの”なんて、いらない!


「できるだけ大多数にうけること。それを第一に考えて、ちばてつや賞に応募する原稿を描きました」

三田さんは1987年(第17回)にちばてつや賞一般部門に応募、入選を果たした。

「オリジナリティなんて、まったく考えなかったし、今も考えない。必要ないですよ」

落ちこぼれ高校生が野心家の弁護士と共に東大を目指す『ドラゴン桜』をはじめ、オリジナリティあふれる作品を多数生み出してきた三田さんの口から、そんな言葉が出たことにまず驚く。

三田さんがそう考えるようになったのは、ちばてつや賞応募前、「ビッグコミック」(小学館)の新人賞で最終選考に残った際に、編集者から言われた言葉がきっかけだったという。

「結局最終選考で落ちたんですが、窓口になってくれた編集の人が言ったのが、『僕は好きなんだけど、ほかの人がね』。それで、編集者の大多数が『うん、いいね』と思えるものを作らなきゃ賞は獲れないんだ、とわかった。ただ、落ちはしたけれど、初めての新人賞応募で一応最終選考には残った。意外といけるな、とも思いました」

そこで次に狙いを定めたのが、ちばてつや賞だった。

「『ビッグコミック』は、一度に賞をもらえるのが3人くらいだったんだけど、ちば賞は入選とか佳作とか、たくさん賞があるので、これだけあれば何かもらえるんじゃないか、という期待もありました(笑)」


日本人が好きなのは、「コミカル」のち「センチメンタル」

ちばてつや賞受賞作は『さよならの贈り物』。売れない童話作家の店主が経営する、潰れる寸前の古書店に謎の老人が現れ、店の立て直しに貢献する……という心温まる作品だ。
ちばてつや賞受賞作『さよならの贈り物』より。「ちば先生に『僕はこういう作品が好きなんだよ』と言われて、嬉しかった。ちば先生の『蛍三七子』という作品が好きなので、それを意識したところはありますね」と三田さん。「大人のメルヘンとして読後感のすばらしい一編。主人公はじめ脇役たちも表情豊か」(ちばてつや氏評)



「掲載媒体の『モーニング』のカラーを考えたら、ちば賞の場合はハートウォーミングな話がいいだろうなと。それって、テレビドラマでも映画でも、多くの人が好きなジャンルですよね。脚本家だと山田太一とか向田邦子、監督だったら山田洋次とか……。圧倒的なマーケットのシェアを握っているのは、ハートウォーミングな作品。お客さんが、たくさんいるわけです。以前からそういうテレビドラマなんかを観ていて、日本人はコミカルに始まってセンチメンタルに終わるのが好きなんだな、と思っていた。応募作もその手法で描いたものです」
『さよならの贈り物』作中作「おおざる小吉」では、近年の三田作品ではほとんど見られない、絵本風のタッチも披露。



賞の傾向、さらにマーケットまでを冷静に分析し、読者が求める心温まる話を描く——。新人時代から、こんなふうにかなり意識的に作品を作っていたのだ。

「編集者って枕詞のように『君の個性を出せ』『今までにない、“新しいもの”を描け』って言うでしょう。僕が思うに、大体9割がたの新人は、それで潰れていく。そもそも、誰が新しいと決めるかも、あいまいですよね。10人が10人『これは新しいな』って言うわけがないのに、“新しいもの”を必死で探しているうちに疲弊して、才能が潰れていくのだと思う。それよりも、大多数に受ける、おもしろいものとは何か——それを見極めることのほうが、大事だと思います」


「1位を獲ろう」の言葉に、自分のなかで変化が起きた

三田さんが漫画家を目指したのは、30歳になる少し前。百貨店を辞め、実家の洋品店を兄と共に経営していた頃だった。

「漫画家を目指すのは、現実逃避だったんですよね。商売の苦しさから逃れたかった。でもただ辞めたいと言うだけでは、親戚からもいろいろ言われて引き止められるし、なかなか簡単には辞められない。何か口実がほしくて、新人賞に応募した」

ちば賞入選の翌年、88年に受賞作が「モーニング」に掲載されデビュー。以後、活躍の場を広げ、漫画家として順調に仕事をこなしていった。

「新人の頃は『競馬の漫画描かない?』とか、企画ものをよく頼まれて。競馬なんて見たこともやったこともないけど、断らずに、いいっすよと引き受ける。で、それなりのものを作るんですよね。だから便利屋的にいろんな雑誌で使われていて、わりかし食えちゃうんですよ。実家の商売からは、完全に手を引くことができた。でも……ひとつ目標を達成したことで脱力して、その生活に安住してしまったんですよね」
きちんと整頓された三田さんの仕事場。
「ヤングマガジン」連載中の『砂の栄冠』をはじめ、野球漫画を多く描いている三田さんらしく、グローブやヘルメットなど、資料用の野球用品がずらり。



そんな三田さんの転機となった作品が、破天荒な高校野球の監督を描いた『クロカン』だ。

96年「週刊漫画ゴラク」(日本文芸社)にて、月1連載をスタート。1年ほどたったところで週刊連載になるが、人気は振るわなかった。

「読者アンケートではいつも、ほぼ最下位。編集長から週刊連載にしよう、と提案があったんですが、『これがあなたの描きたいことだと思うから描いていいよ。ただね、うちの雑誌では人気でないよ』と言われました。そう言われても、描かせてもらえるなら、なんとか食えるからこのままでいいかな、と思っていた」

だが新しく担当になった編集者に言われたひとことが、そんな三田さんの漫画家人生を大きく変えることになる。

「『三田さん、この漫画で1位を獲りましょう』と。『ゴラク』の看板漫画にしたい、と言うんですよ。それまで、アンケートなんて意識して描いたことがなかった。だけど『1位を』と熱心に言われて、自分のなかで変化が起きた」

「食う」ための漫画から「1位」を獲る漫画へ——。

「どうやったら1位を獲れるのか、ということを研究し始めたんです」






期間限定特別配信!

このインタビューでも話題となった、三田さんのちばてつや賞受賞作『さよならの贈り物』が、ただいま「週刊Dモーニング」の【ちばてつや賞増刊 vol.2】で読めます!

8月16日(日)0時~22日(土)23時59分の限定公開配信です。詳細はこちらのニュースをご覧ください!


第68回ちばてつや賞、締切迫る!

2015年度後期・第68回ちばてつや賞一般部門は、2015年8月31日(月)まで作品応募の受付中です!

応募要項等の詳細はこちらのインフォメーションページをご覧ください!
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プロフィール

門倉紫麻(かどくらしま)
漫画ライター。
1970年神奈川県生まれ。慶應義塾大学卒業。Amazon.co.jpエディターを経て、フリーライターに。「FRaU」「ダ・ヴィンチ」「レタスクラブ」などで主に漫画に関する記事の企画・執筆、コラムの連載を行う。
著書に、「ジャンプ」作家に漫画の描き方を聞く『マンガ脳の鍛えかた』、宇宙飛行士らへのインタビュー集『We are 宇宙兄弟 宇宙飛行士の底力』『We are 宇宙兄弟 宇宙を舞台に活躍する人たち』がある。

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