門倉紫麻 漫画家になるための戦略教室

熱意はある。努力もしている。「才能あるよ」とも言われた。
でも、なぜか漫画家になれない——。
そんな漫画家志望者のあなた。
熱意はあって当たり前。努力も言わずもがな。
才能は、確かにあったほうがいい。
でも、漫画家になるためには、それでは足りない
「戦略」が、必要なのです!
漫画ライター・門倉紫麻が、作家陣へのインタビュー、モーニング編集部への
潜入取材を敢行して探った、その戦略とは!?
どこよりも実践的な漫画教室、開校!!

【番外編】 新人賞に応募するかどうか、迷っている人へ(2015/05/26)

モーニングの新しい新人賞【THE GATE】第1回の締め切り5月31日(日)まで、あと1週間を切った。
出来上がった原稿を応募するか、否か、迷っている人へ、篠原事務局長からのメッセージをお届けします。
THE GATEを目指している人はもちろん、漫画家を目指すすべての皆さんの背中を、押します!


「踏ん切り」をつけよ!

新人賞の締め切り1週間を切ってできること。それは、「踏ん切りをつけること」。このタイミングでできるのは実はそれだけだと思います。

今、手元に描きかけの原稿があるなら、とにかく描き上げて送る。完成原稿があるなら、それを送る。出来がいまひとつだと思っていたとしても、それこそ山下和美さんがこのインタビューで言っていたように、「ゴミ箱に捨てるように」でもいいので、送る。そう、踏ん切りをつけてください。

描き上げたものの、まだ「これでいいのかな……」と悩んでいる人も多いと思います。でも、悩んだ時こそ、手を放す時なんです。考えに考え抜いた今が、第三者に見てもらうタイミングなんだと思います。

何度も何度も原稿を見直している自分では、もう冷静な判断はしにくい。

新人賞を受賞した漫画家さんで、「ものすごい自信作です!」と応募してきた人はほとんどいません。「ダメだと思っていました」という人が、実は多いのです。

みんな、迷いを残したまま、それでも踏ん切りをつけて応募してきてるんです。

そもそも「完璧」な作品なんていうものはありません。どんな名作だって「直そう」と思って見直していると「直したく」なってくる。それでもプロの漫画家さんたちは「締め切り」にあわせて「踏ん切り」をつけてくる。「作品から手を放すこと」はプロになるためにとても大事なことなんです。

それに、僕たち編集者は、応募作を「完成度」で見ているわけではありません。「この人は今後どんな作品を描いてくれるんだろうか」と可能性を見つけようとしているんです。何かひとつだけでもいいから、魅力を感じさせてくれればいい。

表に出ないまま眠っている「原石」が、きっとそこら中にある。それを見つけて、磨いて、光らせたい——僕たち編集者は、そう考えて日々の仕事に取り組んでいます。

悩んだ挙げ句、納得がいかないから「今回はやめておこう」とその原稿を引き出しにしまってしまうのは、本当にもったいないことだと思いますよ。

極端なことをいえば、送る先は、THE GATEじゃなくてもいいんです。その作品が世に出るのなら、どこに送ったっていい。……もちろん僕たちとしてはTHE GATEに送ってほしいですよ。

THE GATEは大賞だけでなく、「受賞作全作品全掲載」(※1)なので、賞に入りさえすれば、読者が読んでくれます。載りさえすれば、【MANGA OPEN】(※2)で東村アキコ賞と編集部賞をダブル受賞した『僕の変な彼女』(※3)のように、その瞬間にものすごく話題になることもあるし、『いちえふ』(※4)のように、そのまま連載になる可能性だってあるんです。

これだけダイレクトにプロへの道がひらけている賞は他にないんじゃないかなと思っています。


  • ※1 「モーニング」「週刊Dモーニング」「月刊モーニング・ツー」のいずれかに掲載。
  • ※2 THE GATEの前身の新人賞。
  • ※3 2014年後期・第37回MANGA OPENにて東村アキコ賞、編集部賞を受賞。「モーニング」2015年24号に掲載された。
  • ※4 2013年前期・第34回MANGA OPEN大賞受賞作。試し読みはこちら




あなたも“ポール・マッカートニー”になれる!

この前、ポール・マッカートニーの東京公演を観に行ってきました。僕は、大ファンというわけではなかったんですが、それでも本当に楽しかった! ポールは、途中で水も飲まず、声の張りも失わず、日本語のMCを交えながら、最後まで歌い切りました。72歳とは思えないくらいパワフルで、サービス精神に満ちていた。

そこでは、本当に、老若男女問わず皆が笑顔で楽しんでいて。

杖を突いて来ていた人もいるし、中年夫婦もいるし、小学生くらいの子どもとお父さんの組み合わせもいる。若い女の子もいました。思想信条だって収入だって国籍だってバラバラでしょう。

だけど、東京ドームにいる5万人以上が、「ポール・マッカートニー」の名の下では、その瞬間、同じように楽しんでいるんですよね。これは本当に素晴らしい瞬間で、これこそ本当の「娯楽」なんだと実感しました。

その光景にもの凄く感動していたんですが、よくよく考えてみると、僕たちが世に送り出している漫画ってものは、この「ポール」と同じことができるんじゃないか、できているんじゃないかと、はたと気付いたんです。

「モーニング」は青年誌ですが、お父さんも、お母さんも、親子でも、老若男女、誰もが楽しめるような漫画が載っています。いわゆる「漫画読み」だけではない、みんなを楽しませることのできる、ポールの音楽と同じ本当の「娯楽」を目指している雑誌です。

その「娯楽」が実現できた時、漫画ってものが作り出しているのは、あの東京ドームと同じ、 境遇の違う人たちが同じく楽しんでいる、あの幸せな光景なんじゃないでしょうか。

僕たちが何万人もの読者を直にこの目で見られることはありません。

でもあの日は、本当に楽しそうな観客の姿と漫画読者の姿が重なり、「漫画が何万人にも読まれるってことは、こんなにも多くの人たちが、感動したり、泣いたり、いい気持ちになったりしてくれているってことなのか……」と実感して、鳥肌が立ちました。

「娯楽」なんて世の中に絶対に必要なものではないのかもしれません。でも「娯楽」にしか生み出せない素晴らしい瞬間があるんだと思います。

「モーニング」に漫画が載れば、何万人もの人が作品を読んでくれます。何万人もの人が作品を読んでくれれば、もしかしたら「ポール」と同じことができるかもしれない。

きっかけは、今、あなたの手元にある、その原稿かもしれないんです。

THE GATEへのご応募、心よりお待ちしております。


(構成=門倉紫麻)




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プロフィール

門倉紫麻(かどくら・しま)
1970年、神奈川県出身。漫画ライター。
Amazon.co.jpエディターを経て、フリーライターに。「FRaU」「ダ・ヴィンチ」「レタスクラブ」などで主に漫画に関する記事の企画・執筆、コラムの連載を行う。
著書に、「ジャンプ」作家に漫画の描き方を聞く『マンガ脳の鍛えかた』、宇宙飛行士らへのインタビュー集『We are 宇宙兄弟 宇宙飛行士の底力』『We are 宇宙兄弟 宇宙を舞台に活躍する人たち』がある。

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