門倉紫麻 漫画家になるための戦略教室

熱意はある。努力もしている。「才能あるよ」とも言われた。
でも、なぜか漫画家になれない——。
そんな漫画家志望者のあなた。
熱意はあって当たり前。努力も言わずもがな。
才能は、確かにあったほうがいい。
でも、漫画家になるためには、それでは足りない
「戦略」が、必要なのです!
漫画ライター・門倉紫麻が、作家陣へのインタビュー、モーニング編集部への
潜入取材を敢行して探った、その戦略とは!?
どこよりも実践的な漫画教室、開校!!

【13限目】 第5回THE GATE審査員・鈴ノ木ユウさんインタビュー(後編)(2017/04/25)

全受賞作品を「モーニング」月刊「モーニング・ツー」「週刊Dモーニング」のいずれかの媒体に掲載する“超実戦型”の新人賞が【THE GATE】です。

ただいま応募受け付け中の第5回から新たに審査員を務める鈴ノ木すずのきユウさん(「モーニング」にて『コウノドリ』連載中)と大今おおいま良時よしときさん(「週刊少年マガジン」にて『聲の形』を連載。現在『不滅のあなたへ』連載中)のお二人に、5月末の応募締め切りを前にインタビューを敢行しました!

まずは、鈴ノ木ユウさんに、創作に臨む心構えについて、熱く語ってもらいます。投稿者や新人作家がすぐに取り入れられる、新人時代に鈴ノ木さんが自らに課したという「ルール」は必読です!(※前編はこちら

写真=関根虎洸



「描きたい」ものではなく、「描かなきゃいけない」ものに出会えた

——何度もネームを出し続けているうちに、音楽もの『おれ達のメロディ』で短期集中連載が始まるわけですが、それまでボツになっていたものと何が違ったのだと思いますか?

鈴ノ木 明らかに「これ」が違った、と言えるようなことでもないんですよね……。でも編集さんには何かが引っかかったんでしょうね。いつもは1回しか読まないのに、初めて2回続けてネームを読んでいましたから。音楽もので、自分がやってきたことを描いたので、方向性が良かったのかもしれない。先ほども言いましたが、最初は自分のことを描けばいいと思うんですよ。打ち止めが来るまでは。本当はそれで最後までいけたら一番いいんですけどね……僕の場合はすぐに打ち止めが来ました(笑)。
短期集中連載作品『おれ達のメロディ』(「モーニング」2011年22・23合併号~29号掲載)。音楽業界に生きる人々を、新人マネージャー・ケンタロウの視点から描く。ちば賞受賞作『東京フォークマン/都会の月』と同様に、元ミュージシャン鈴ノ木さんならではの作品。



——『おれ達のメロディ』の後、「自分のこと」ではない『コウノドリ』を描くに至る経緯は、どんなものだったのですか。

鈴ノ木 『おれ達のメロディ』は売れていないミュージシャンの話だったんですが、続きを描くなら登場人物たちがだんだんと売れていかなきゃいけない。でも僕は売れたことがないし、描いても軽いものになってしまう気がして。じゃあ違うものを描こうと思ったんですが、さっき話したように、「描きたい」ものが見つからないんですよ。

——例の多くの新人がぶち当たる壁ですね。

鈴ノ木 そうしたら奥さんが「私の出産の時の担当の先生が、ピアニストもやっていてさぁ。産婦人科医ってすごく大変な仕事らしくて……」という話をしてくれたんですよ。で、「ピアニストで産婦人科医の主人公ってどうよ!」と。それで、奥さんの幼なじみの産婦人科の先生に話を聞いたら、自分の知らない世界がありすぎて。「これは……描くのは俺しかいない!」と、少年マンガの主人公みたいに勘違いしちゃったんですよね。子どもが無事に産まれて大きくなることって当然じゃないんだなって……。これは「描かなきゃいけない」と思いました。

——「描きたい」ではなく「描かなきゃいけない」と思ったんですね。

鈴ノ木 はい。そういうものに出会えてラッキーだったと思います。編集さんには「音楽を絡ませたものをもう一回描いてみたら?」と言われていたので、ピアニストという設定も生かせる。ネームを持って行ったら、編集さんに「こうきたか!」って言われました。最初、主人公は売れないピアニストっていう設定だったんですよ。でも編集さんに「(『俺たちのメロディ』と同じで)また売れてないミュージシャン!?」と言われたので、今回は売れている設定にしました(笑)。
元ミュージシャンの鈴ノ木さんらしく、仕事場にもギターが置かれていた。



漫画は周りの人に、ガンガン見せないと!

——以前、モーニングでさせていただいたインタビューで「バンドをやっていた頃、ライブを観に来てくれた友達はみんな『すげえよかったよ』って言うだけで、誰も悪いところを指摘してくれなかった。だから今、読者の方から否定的な意見がもらえるのはうれしい。やっと、プロとして文句を言われる場所までこれたんだなあと思える」とおっしゃっていたのが印象的でした。

鈴ノ木 そうなんですよ。ようやく悪く言われる場所に来たなぁと思ったし、その意見がまた的を射ていたりすると、もっとがんばらなきゃって思う。やっぱり漫画は人に見てもらうのが一番だなと思います。

——まだ担当編集がついていなかったり、雑誌に掲載される前の段階だったりする人は、身近な人に見せるのもいいですよね。

鈴ノ木 ガンガン見せないと! 僕も以前は奥さんに毎回見せていました。最近は、子供も大きくなって僕に構っている時間もなくなってきたのか、あまり見てもらっていないですが(笑)、大事な場面を描く時は意見を訊きますね。

——読んだ人たちから否定的なことを言われて、落ち込んだりはしないですか?

鈴ノ木 いや、否定的に言われることって、大体自分でも感じていることなんですよ。自分の甘いところを突かれたな、と思うだけ。そんなはずない! と思うことはないですね。

——自分が一番わかっているんですね。

鈴ノ木 はい。漫画って、ふたつしかないと思うんですよ。読み終わって「面白い!」って思うものと、「うーん……なるほど」って思うものと。「うーん……なるほど」と思うのには理由があるんです。だからそこを直せば、確実に良くなります。
鈴ノ木さんの仕事机の上。缶の中に、ペンがぎっしり。



「これを描いた人に会いたい」と思わせてくれる漫画を

——鈴ノ木さんが漫画を描くうえで一番気をつけていることは何ですか。

鈴ノ木 わかりやすいことが一番だと思っています。

——確かに、鈴ノ木さんの漫画は大変わかりやすくて、毎回するすると読めます。

鈴ノ木 ありがとうございます。僕は、漫画をいっぱい読んできたわけではなかったので、そんな自分が読んだ時に、読みやすいもの、わかりやすいものがいいと思っていて。それが漫画の基本だと思うんです。

THE GATE事務局長 投稿者の方には、ぜひ『コウノドリ』のフキダシの大きさを見てほしいです。大きめで文字の周りの余白が多く、それが読みやすさにつながっているんですよ。サッと読んだ時に、絵を読み飛ばすことはあるかもしれませんが、セリフを読まない人はいないので、実はフキダシの大きさってすごく重要だと思います。

鈴ノ木 確かに、フキダシは意識していますね。フキダシをどう並べるかで、セリフをどう読ませるかが決まるので……そうやって並べていく感じが、楽譜に似ているなと思っていて。

——楽譜ですか。

鈴ノ木 そうです。まあ僕の場合は、「バイエル」みたいな、初心者レベルのものだとは思うんですが。大事なセリフをきちんと読ませたい、という時には、その前に「……」と無言のフキダシを入れて、1拍止めてみたりする。「……」が何秒にあたるのかとか、すごく考えますね。リズムみたいなものがあると思うので。

——どうしたらそのリズムが身につくようになるのでしょう。

鈴ノ木 どれだけネームをたくさん切るか、たくさんの人に見てもらえるかはもちろん大事なんですが……それを「考えてやる」のか「考えないでやる」のかで、大きく変わってくると思います。絵は、漫画を描く人はもともと好きなので、放っておいてもうまくなる。でもネームは意識しないとうまくならない。
『コウノドリ』より(「モーニング」2017年18号掲載)。大きめのフキダシを「楽譜」のように配置。読者の目線を誘導して、読みやすく、リズムのあるページに。



——以前の取材で、NHKの朝ドラ(「連続テレビ小説」)が漫画づくりの参考になる、というお話をされていましたが、どういった部分に関してでしょう。

鈴ノ木 朝ドラって、15分の中でシーンが大体4つ切り替わるんですよ。その4つの中で、登場人物の気持ちがどう移り変わっていくのかを描いていく。言いたいことはひとつでいい、ヤマがあって、ヒキがあって、次の回の頭では前回の最後を見せて……連載漫画とすごくよく似ていますよね。芸術性を追求するような漫画を作りたいという人には参考にならないかもしれませんが、僕にはすごく参考になっていますね。まあこれが正解というわけではないんですが、ひとつの形ではあるかなと。

——作品をただ観るのではなく、分析しながら観ていらっしゃるのですね。

鈴ノ木 そうですね。漫画を読む時も、「これはなぜ面白いんだろう?」と考えながら読むと、自分で作品を描くときに大きく変わってくると思います。「なぜこんなにコマ数が多いのに読みやすいのか」と思った漫画の、コマ数を数えたりしていましたね。

——特に参考になったのはどんな作品でしたか?

鈴ノ木 モーニングの作家さんの作品だと、前から大好きだった井上雄彦さんの『バガボンド』、弘兼憲史さんの『島耕作シリーズ』……それに森高夕次さんとアダチケイジさんの『グラゼニ』は、コマ数が多くても飽きさせない演出がうまい。浦沢直樹さんの作品はカメラワークがすごいな、といつも思います。

——THE GATEの審査では、応募作のどんなところに注目して読まれますか?

鈴ノ木 僕は、「漫画はネーム」だと思っているので、セリフや演出の部分を見ると思います。あと、「これを描いた人に会いたいな」と思えるような作品があるとうれしいですね。そう思うことってありませんか?

——あります、あります。

鈴ノ木 作品って、その人そのものではないですが、どんな人なのかを表すものだと思うので。あとは……読み終わった時に、すげえな! とか面白いな! とか、思わず「言わされて」しまうような作品に出会いたい。それを描くのに、新人だとかベテランだとかは、関係ないと思います。(了)



鈴ノ木ユウさんに、あなたの漫画を読んでもらえるチャンス!

第5回THE GATEは、5月31日(水)締め切りです!(当日消印有効)

応募要項等の詳細はこちらのインフォメーションページをご覧ください!
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プロフィール

門倉紫麻(かどくらしま)
漫画ライター。
1970年神奈川県生まれ。慶應義塾大学卒業。Amazon.co.jpエディターを経て、フリーライターに。「FRaU」「ダ・ヴィンチ」「レタスクラブ」などで主に漫画に関する記事の企画・執筆、コラムの連載を行う。
著書に、「ジャンプ」作家に漫画の描き方を聞く『マンガ脳の鍛えかた』、宇宙飛行士らへのインタビュー集『We are 宇宙兄弟 宇宙飛行士の底力』『We are 宇宙兄弟 宇宙を舞台に活躍する人たち』がある。

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