熱意はある。努力もしている。「才能あるよ」とも言われた。
でも、なぜか漫画家になれない——。
そんな漫画家志望者のあなた。
熱意はあって当たり前。努力も言わずもがな。
才能は、確かにあったほうがいい。
でも、漫画家になるためには、それでは足りない。
「戦略」が、必要なのです!
漫画ライター・門倉紫麻が、作家陣へのインタビュー、モーニング編集部への
潜入取材を敢行して探った、その戦略とは!?
どこよりも実践的な漫画教室、開校!!
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【12限目】 第5回THE GATE審査員・鈴ノ木ユウさんインタビュー(前編)(2017/04/25)
全受賞作品を「モーニング」、月刊「モーニング・ツー」、「週刊Dモーニング」のいずれかの媒体に掲載する“超実戦型”の新人賞が【THE GATE】です。
ただいま応募受け付け中の第5回から新たに審査員を務める鈴ノ木ユウさん(「モーニング」にて『コウノドリ』連載中)と大今良時さん(「週刊少年マガジン」にて『聲の形』を連載。現在『不滅のあなたへ』連載中)のお二人に、5月末の応募締め切りを前にインタビューを敢行しました!
まずは、鈴ノ木ユウさんに、創作に臨む心構えについて、熱く語ってもらいます。投稿者や新人作家がすぐに取り入れられる、新人時代に鈴ノ木さんが自らに課したという「ルール」は必読です!

写真=関根虎洸
「やれ」と言われたら、断らない!
——一色まことさん、ツジトモさんに次ぐ、THE GATEの二代目審査員となりますが、お話が来た時の気持ちをお聞かせください。鈴ノ木ユウ(以下、鈴ノ木) 僕が審査員だなんておこがましくはあるんですが……忙しいお二人がやってこられたわけですから、僕にお話が来たのなら断ったらいけないよな、と。それに、何かを「やれ」と言ってもらえること自体、とてもありがたいことで。だから「やれ」と言われたら断らないです。もったいないので(笑)。今回、大今良時さんと審査員をご一緒できるのもうれしくて。『聲の形』は最近読んだ漫画の中で、一番おもしろかったですし、すごい方だなと思いました。
——どういったところがすごいと思われましたか?
鈴ノ木 漫画を描いていてしんどいのって、「自分が」思っていることを描くんじゃなくて、自分を離れて、その「キャラクターが」思っていることを描かなければいけないところだと思うんですよ。「この人(キャラクター)は、本当にこういうことを言うのか?」ということを、常に自分に問うてOKを出さなければいけない。大今さんは、その部分のジャッジがすごく厳しい方なのではないか、という印象を持ちました。
——本当に「このキャラクターがこのセリフを言うのか」を、とことんまで考え抜いている、ということでしょうか。
鈴ノ木 はい。しんどいことをやり切っている方だと思いました。
漫画を描くことは、無謀ではないと思った
——『コウノドリ』が週刊連載になって、今年で5年目ですね。振り返ってみていかがですか?鈴ノ木 どうですかね……あんまり記憶にない(笑)。「もうすぐ連載200回だよ」って編集さんに言われたんですが、自分ではそんなに描いた気もしないんですよ。
——2015年にTVドラマ化、2016年には講談社漫画賞も獲られて、と目まぐるしい変化があったと思うのですが。
鈴ノ木 うーん……僕自身は、その変化のスピードにはついて行っていないんですよ。感覚としては、1週間に1本、漫画を仕上げていくだけ。それが一番大事だし、それが一番幸せかなと思っています。

2016年に講談社漫画賞一般部門を受賞した際に贈呈されたブロンズ像。アシスタントさんの机をロの字型に並べてできた真ん中の空間に、どっしりと置かれていた。
——週刊で描けることが幸せ、だと。
鈴ノ木 はい。デビューしたての頃は仕事がなくて、毎月、月末になると奥さんに「お金がないよ」って言われていたので、今、毎週「締め切りですよ」って言われることがどれだけ幸せか。1000円しかないのに、奥さんから「2000円のお酒を買って来て」と言われて困ったりしていたので(笑)。
——締め切りがないと描けない、という漫画家さんもいらっしゃいますね。
鈴ノ木 僕もそういうタイプです。僕はもともとどうしても描きたいことがあって漫画を描き始めたわけではないので。読んでくれる人がいるから描けるようなところがある。結局それが自分の幸せでもあるんですが……。
——鈴ノ木さんはもともとロックミュージシャンとして活動されていたんですよね。お友だちの漫画家さんのところでアシスタントをしたのが、漫画を描き始めたきっかけだった。
鈴ノ木 そうですね。ロックをやりつつ、漫画でちょこっとお金がもらえたらいいかなあ、みたいなことが、漫画を描く動機でしたから。
——そうやって描いた1作目が、ちばてつや賞の準入選に。
鈴ノ木 そうですね。でもそのあと、特に描きたいと思うものがなくて……。新人賞を獲ったばかりの漫画家って、僕もそうだったんですが、漫画家になって有名になりたいとか、お金が欲しいなとか、そういう気持ちはあっても、何が「描きたい」のかと言われると、実は浮かばなくなる人が多いと思うんですよ。最初のうちは自分自身のこととか、経験したことを描けばいいんですけど、その先が難しい。実は描きたいことがなかった! という事実にぶち当たって、描けなくなる。

2007年後期・第52回ちばてつや賞準入選作『東京フォークマン/都会の月』。東京で夢を叶えようともがく売れないミュージシャン・タクの焦燥と葛藤を描く。鈴ノ木さん自身の体験を色濃く反映させた作品。
——なるほど……実はそんなふうに悩んでいる新人作家も結構いるのかもしれないですね。
鈴ノ木 めちゃくちゃいると思います。
THE GATE事務局長 たしかに。新人賞を獲った後に定期的にネームを上げてきてくれる受賞者はそれほど多くいません。みなさんそこにぶち当たっているのだと思います。
鈴ノ木 自分ならできる、と思っているところもあるんですよ。でもなかなかできなくて時間だけが経って、そのうち「編集の人に連絡をして、何か言われたらどうしよう」とか思うようになって、連絡できなくなっていく。
THE GATE事務局長 久々に連絡をくれて「覚えてますか?」と言う方もいるんですが、編集者はもちろん覚えています!
鈴ノ木 僕も「覚えてますか?」と言ってしまう気持ちはわかります。経験者ですから(笑)。最初に賞を獲った後すぐ子どもができたのもあって、一回漫画を描くのをやめていた時期があったんですよ。バイトを掛け持ちして稼いでいて。でも3年経った時に、もう一度漫画を描こうと思って、編集さんに電話をしたら、「今まで何してたんですか!?」って言われました(笑)。
THE GATE事務局長 言いたくなる気持ちはわかります(笑)。でも、何年あいても、「描いたら編集に見せる」というのが、この業界の基本というか。持ち込みの方でも、「あの話を描いた○○です」って言われたら、ほとんどの場合、思い出しますよ。
——臆せずどんどん連絡していいんですね! 鈴ノ木さんは、3年経った時になぜそこでもう一度漫画を描こうと思い、さらに実行に移せたのでしょう。
鈴ノ木 夜、ラーメン屋さんで働いて、そのあと深夜2時くらいから牛丼屋さんで働いていて。牛丼屋さんでのバイト中に、ちょっと怖い感じの人に、理不尽にブチ切れられたことがあったんですよ。僕より20歳近く若いバイトの先輩に経緯を説明しようとしたんですけど、その年下の先輩に「まあまあ」って奥に連れて行かれて……。それでもうこんなのはいやだ、現状を変えなければと思ったのは大きかったです。
——現状を変える=就職しよう、とは思わなかったのですね。家族がいると、漫画家を目指すことは無謀な挑戦だと考えて、あきらめる人も多いと思うのですが。
鈴ノ木 僕も、無謀なことはできないとは思っていたんですよ。でも漫画を描くことを、無謀なことだとは思わなかった。漫画にちょっとした可能性を感じていたんだと思います。
何回も直すのは「やりたくない」けど、「やれない」わけじゃない。
やれるんですよ、誰でも
——そして3年ぶりに描いた『エビチャーハン』で、ちばてつや賞に入選されました。
鈴ノ木 でも授賞式の時に、新しく担当になった編集さんに会ってすぐ「原稿直してね」って言われたんですけどね(笑)。そのままではモーニングに掲載できないから、と。その頃は、編集部に行ってもなんとなく居心地が良くないんですよ。授賞式で話したことがある編集さんがいても、目が合ってもそらされたような気が勝手にしてしまったり……修学旅行の後みたいな気持ちなんですよね(笑)。

2010年前期・第57回ちばてつや賞に入選後、デビュー作となった『エビチャーハン』。サッカー部に入りたいと願う、中華料理店の息子・ター坊とチームメイトとの交流を描く。鈴ノ木さんの実家が中華料理店なこともあり、店の雰囲気やチャーハンのビジュアルがリアル!
——「あれ? 旅先ではあんなに盛り上がったのに、そっけないな」という感じですか。
鈴ノ木 そうです。でも自分の描いた作品の掲載が決まれば、誰なのかわかってもらえるし、連載になれば、さらに話もしやすくなる。そうやって、目に見えて状況が変わっていくのがいいな、とも思ったんですよ。あと、3年前はなぜダメだったのかを考えて、今回は自分に「ルール」を課すことにしました。
——どんなルールですか?
鈴ノ木 基本的にネームは1週間にひとつは仕上げて、担当さんと週に1回打ち合わせをする、と決めた。
——ネームを週に1本とは、かなり大変そうですね。
鈴ノ木 すごくしんどいです。しかも毎回、編集さんに「つまらないです」って言われて、3分で打ち合わせが終わる(笑)。それでまた、ネームを直して持って行く。でも3年前は、そのことから逃げていたんだなと気づいて。まず、ネームを何度でも描き直すことから始めないと、話にならないんですよ。描き直すことって、「やりたくない」けど、「やれない」わけじゃない。やれるんですよ、誰でも。
——そこを通らなければどこにも行けないんですね……そこで挫折してしまう人も多いと思います。
鈴ノ木 そうですよね。挫折するか、人のせいにするか……。
——「人のせいにする」というのは、「担当編集者と相性が悪いからだ」と思うようなことですか?
鈴ノ木 実際に相性が悪いこともあるのかもしれないし、ネームって自分の内側を見せるようなものだから、ネームを否定されてしまうと、自分という人間を否定されたように錯覚を起こしてしまうこともあるんですよね。それを「担当と合わない」と言う人もいるんだと思います。その気持ちもわかるんですが、「どこまでやったのか」ということですよね。編集さんに言われたことを実際にやってみて、それでつまらないものができたの? と。言われたところを直して、それ以上のものにすることを目指せばいいと思うんですよ。それが成長することだと、僕は思います。
——そうするうちにだんだんと編集者との信頼関係もできていくのでしょうか。
鈴ノ木 そうですね。僕も最初は編集さんとの関係をうまく作れてはいなかったですよ。なかなか電話もできなかったし、ネームが描けていないと後ろめたくて電話に出たくなかったし。でもさっき言った「週1でネームを提出する」のと同じく、「編集さんの電話には絶対出る」というのもルールとして決めたんですよ。今も電話には必ず出ます。ネームが間に合わない!って焦っている時でも出るようにしている。1ページもできていないのに電話では「今5ページまでできてます!」ってサバを読んで、自分にプレッシャーをかけたりして(笑)。編集さんと漫画家って、目標は同じなんですよ。目標は、いい漫画を作ること。優しくしてくれる人がいい編集者かというと、全然違っていて。優しくても、それで漫画がつまらないものになるんだったら意味がない。それじゃあただの「気が合うヤツ」ですからね(笑)。
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プロフィール
- 門倉紫麻(かどくら・しま)
- 1970年、神奈川県出身。漫画ライター。
Amazon.co.jpエディターを経て、フリーライターに。「FRaU」「ダ・ヴィンチ」「レタスクラブ」などで主に漫画に関する記事の企画・執筆、コラムの連載を行う。
著書に、「ジャンプ」作家に漫画の描き方を聞く『マンガ脳の鍛えかた』、宇宙飛行士らへのインタビュー集『We are 宇宙兄弟 宇宙飛行士の底力』『We are 宇宙兄弟 宇宙を舞台に活躍する人たち』がある。
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