門倉紫麻 漫画家になるための戦略教室

熱意はある。努力もしている。「才能あるよ」とも言われた。
でも、なぜか漫画家になれない——。
そんな漫画家志望者のあなた。
熱意はあって当たり前。努力も言わずもがな。
才能は、確かにあったほうがいい。
でも、漫画家になるためには、それでは足りない
「戦略」が、必要なのです!
漫画ライター・門倉紫麻が、作家陣へのインタビュー、モーニング編集部への
潜入取材を敢行して探った、その戦略とは!?
どこよりも実践的な漫画教室、開校!!

【再録】 ちばてつや賞出身! 三田紀房さんインタビュー(2/3)(2015/10/20)

2013年に「モーニング」に掲載され話題を呼んだ、ちばてつや賞出身作家が新人時代から現在の活動までを語るシリーズ【あの人もちばてつや賞出身だった!】ちばてつや賞35周年を記念し、『戦略教室』にて再掲載中です!

シリーズ二人目の登場は、第17回ちばてつや賞に入選し、その翌年にデビューした三田紀房さんでした。

型破りな弁護士・桜木が、落ちこぼれ生徒を東大に入れるべく奮闘する『ドラゴン桜』では、漫画ファンのみならず受験生やその親にまで影響を及ぼし、社会現象を巻き起こした三田さん。現在「モーニング」では、投資家中学生たちを描く意欲作『インベスターZ』を連載中です。

全3回のインタビューのうちの第2回では、「食う」ためでなく、「読者アンケートで1位を獲る」漫画を描くことを決意した三田さんが実践したこと、そして三田作品ではおなじみの、あのキャラクターについて赤裸々に語ります!(第1回はこちら
写真=藤本和史



【第2回】 三田流“ヒット漫画の方程式”とは!?


デビュー後しばらくは、漫画で「食う」ことを第一に、そのための方法を研究し、実践してきた三田さん。

だが「週刊漫画ゴラク」(日本文芸社)で高校野球漫画『クロカン』を連載中に、大きな転機が訪れる。編集者の「読者アンケートで1位を獲って『ゴラク』の看板作品になりましょう」というひとことが、三田さんの目標を「食う」ではなく「1位を獲る」ことに変えたのだ。

「期待に応えたい、とも思いましたしね。努力しなくちゃいけないな、と」

もちろん、そこでただ闇雲にがんばるような三田さんではない。まず、研究。連載雑誌で当時1位を獲っていた作品を、徹底的に分析することから始めた。

「『漫画ゴラク』でずっと、ぶっちぎりで1位を獲り続けているのは、金融漫画の『ミナミの帝王』なんです。その『ミナミ』に肉薄するくらいじゃないと、絶対に雑誌の看板にはなれない。なので、『ミナミ』がどういう方程式で描かれているのかを研究して、『クロカン』を『ミナミ』的に描く、という自己改革をしたんです」

三田さんの見つけ出した『ミナミ』の方程式は、以下の通り。


  1. 毎回決めゼリフがある
  2. 顔のアップを多用する
  3. 多彩な比喩表現を駆使する


「それまでこだわっていたリアルな表現は、きっぱりやめました。この方程式を使いつつ、今までなら絶対に描かないようなシーンも、描いてみたんです。キャッチャーが剛速球を捕る練習をする場面なんですけど、なぜか牛のフンを風船に入れたものを投げて捕らせる、という(笑)。それで球が捕れるようになるという根拠は一切ない、無茶苦茶な練習法ですよね。でも、その回で、いきなりアンケートが3位になった。やっぱり『ゴラク』で受けるのはこういうものなんだ! と確信しました。次に比喩を使って、鷲とオオカミがにらみ合っている絵を見開きでバーンと出した。主人公のいる高校名が『鷲ノ森』で、ライバル高の監督がオオカミみたいなやつだったから、そのまま鷲とオオカミを描いたんです」

その回で、『クロカン』は見事、アンケート1位に。

「『ミナミを破った!』って、出版社が騒然となったらしい(笑)。それからは毎回、何か比喩を用意するようになりました。読者は、もっともっとを求めるので、比喩もどんどんエスカレートしていきましたね」

いまや三田作品でおなじみの比喩表現は、ここがスタートだった。
【1】 決めゼリフ
『ドラゴン桜』①巻より。時には1話にいくつもの決めゼリフが贅沢にちりばめられる。
【2】 顔のアップ
『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』④巻より。三田作品では主人公以外の顔にもアップが多用されるのが特徴的。インパクト大!
©三田紀房

【3】 比喩表現
『クロカン』⑦巻(日本文芸社)より。ベタともいえる比喩を、大胆に。これが、絶対王者『ミナミの帝王』を抑え、『クロカン』が読者アンケート1位を穫った回。



「僕は『ミナミの帝王』からすべてを学んだ。『ミナミ』の作家さんと直接話したことはないですが、心の師匠だと思っています」

だが、三田作品を読んで「『ミナミ』っぽい」「『ミナミ』の影響を受けているな」と思う人は、ほぼいないだろう。それほど三田さんは、『ミナミ』の方程式を「自分のもの」にしている。

「うーん、自分では『ミナミ』と完全に同じように描いているつもりですけどね。でもまあ、読者がどう思うかはどちらでもいいんですよ。僕が『ミナミ』に方程式を見つけて、その通りにトライする、ということが大事なわけですから」

方程式を見つける。そして、その通りにトライする。三田さんは、そこから漫画家としての新たな道を拓いた。

しかし、新人にとっては、方程式を見つけ出すこと自体が、まず難しい。ならば、三田さんが見つけたこの『ミナミ』の方程式を、そのまま使ってみる、というやり方もあるのかもしれない。

「いいと思いますよ。この方程式が自分に合う合わないは別として、まずは自分に“方程式通りに漫画を作る能力”があるか、トライしてみるといいと思います」


自分の体質に合う“看板俳優”を作れ

『クロカン』では、比喩表現だけでなく、三田作品に登場するキャラクターの“原型”も確立させた。それが、大胆な方法で野球部を甲子園へと導く、監督の黒木だ。

「黒木はうちの看板俳優ですね(笑)。彼はなんでもやってくれるので、『ドラゴン桜』では弁護士を演じてもらいました」

落ちこぼれ高校生を東大に入れるべく奮闘する弁護士・桜木を描いた『ドラゴン桜』。目的達成のための明確なビジョンを持ち、横暴といえるほど厳しく生徒を指導、プロとして己の利益を冷静に計算しつつ、時に熱い情熱がほとばしる指導者……確かに、黒木と桜木のキャラクターはぴたりと重なる。

「もともと、『モーニング』の編集が、『クロカン』のキャラでもう1本描けないですかね、と言ってきたんですよ。黒木のキャラがすごくいいから、って。だから同じキャラを使って、舞台を変えて、彼にスーツ着せてヒゲをちょっと濃くして、『お前、今度から弁護士やれ』ってね(笑)。あっちは甲子園へ行け、で、こっちは東大へ行け。まあおんなじですよね。『ヤングマガジン』で連載している『砂の栄冠』にも出てきますよ。サングラスをかけてノックするコーチが(笑)」
©三田紀房
上から『クロカン』の黒木、『ドラゴン桜』の桜木、『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』の海老沢、『砂の栄冠』の伝説のノックマン。“彼”は三田作品を引っ張る、大事な“看板俳優”だ。



確かに、黒木や桜木のようなキャラクターがいれば、作品づくりの上で、どれだけ心強いことだろう。だがそれもまた、新人にとっては難しいことでもある。看板キャラクターはどうやって作ればいいのだろう。

「キャラは、ある程度は自分の体質に合う人を見つけるべきだと思う。マッチョなものが好きな作家さんなら、マッチョなキャラがいいだろうし、ポップならポップ、ナイーブならナイーブ……自分が思い入れできるタイプを突き詰めて、キャラを作っていくといいと思います。僕の場合は、こういうリーダーであれば人はついていくだろうな、というリーダー像みたいなものが、もともと自分の中にあったんですよね。それが黒木というキャラになったんだと思う。黒木が僕の中から出てきたことで、漫画家として長くやってこられたのだと思います」






第69回ちばてつや賞、募集開始!

2016年度前期・第69回ちばてつや賞一般部門では、ただいま作品応募の受け付け中です! 締め切りは2016年2月29日(月)当日消印有効です。

応募要項等の詳細はこちらのインフォメーションページをご覧ください!
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プロフィール

門倉紫麻(かどくらしま)
漫画ライター。
1970年神奈川県生まれ。慶應義塾大学卒業。Amazon.co.jpエディターを経て、フリーライターに。「FRaU」「ダ・ヴィンチ」「レタスクラブ」などで主に漫画に関する記事の企画・執筆、コラムの連載を行う。
著書に、「ジャンプ」作家に漫画の描き方を聞く『マンガ脳の鍛えかた』、宇宙飛行士らへのインタビュー集『We are 宇宙兄弟 宇宙飛行士の底力』『We are 宇宙兄弟 宇宙を舞台に活躍する人たち』がある。

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