GIANT KILLING extra

【ファミリー~Jリーガーと家族 ④】 鹿島アントラーズ 土居聖真選手(前編)(2016/10/06)

『GIANT KILLING extra』の新しいインタビューシリーズが始まりました。

Jリーガーが語る、家族の物語《ファミリー》。いつも応援している選手たちの、普段見せない顔に、ぜひ出会ってください。

川崎・小林悠選手(前編後編)、広島・森﨑和幸選手(前編後編)、浦和・柏木陽介選手(前編後編)に続く四人目の登場は、鹿島アントラーズ・土居聖真選手です。



小学6年生にして迫られた大きな決断を、土居どい聖真しょうまは“今”のことのように語りはじめた。

「まあ、泣いて、泣いて、泣きまくりましたよね」

サッカーを始めたOSAフォルトナ山形FCの一員として出場した全国大会で、鹿島アントラーズのスタッフに見初められた土居は、後日、鹿島ジュニアユースのセレクションを受けると見事に合格する。それは同時に生まれ育った山形を出ることを意味していた。

「小学校のころは、県内ではもう、本当に王様というか。自分が一番うまいと思ってました。 出会った指導者にも『お前はここ(山形)にいちゃダメだ』って言われていて。だから、鹿島のジュニアユースに合格したときには、鹿島は強いという印象を持っていたので、そこでプレーしたいと思いました。子どもながらに……もっと広い世界が見てみたかったんです」

当然ながら、本人も「初めて」と話す家族会議が行われた。そこで土居は父・通孝みちたかさんから厳しい言葉をかけられた。

「鹿島でサッカーがしたいなら一人で行け。お父さんもお母さんも付いては行かない。お前は、家族や親戚、それに友達もいないところでやっていけるのか?」

それでも、泣きじゃくりながら土居少年はこう答えた。

「うわ~ん、もう一人で行く! 一人で行かせろ~!」


12歳で鹿島へ。決意をしたときに交わした父との約束

父・通孝さんが、一度土居を突き放したのは、我が子の覚悟を知りたかったからだろう。そして、一人息子の覚悟を感じ取った両親は、母・栄美えみさんが鹿嶋に付いて行くという方向で結論を出した。

「何度も話し合って、最後は自分で決めました。最終的に両親は全力でサポートしてやるって言ってくれましたね」

そのとき、土居は父・通孝さんと約束から一つの条件を言われた。

「お母さんと二人で暮らすんだ。お前は、お母さんが困っているときに、手を差し伸べることができるのか?」

12歳にしてサッカーのために、父親、親戚、そして無邪気に遊び、ときには殴り合いの喧嘩けんかをするほど仲の良かった友人たちと離れて暮らす決意をした土居少年は、ほほを伝ってあふれ出る涙をぬぐいながら返事をした。

「うん。やるよ。お母さんを手伝うよ」

土居いわく、母・栄美さんは「人見知りすることなく、すぐに誰とでも打ち解けてしまう」明るい性格だという。だから、「どんなことにも踏み込んでくるし、子どものころは、それがうるさいなって思ったこともありました」と笑う。それに対して、父・通孝さんは「外では口数が少なく寡黙だった」という。ただ、「普段は優しいけど、『ここぞ』というときに怒るのは、いつもお父さんで、怒ったときには本当に怖かった」と、両親の印象を話してくれた。

「たぶんですけど、お父さんはサッカーがうまくなるだけではなく、人間としても成長してほしいという思いで、母親を手伝えるかって言ったんでしょうね。正直、子どもなんて、新しい環境に放り込んでしまえば、何とでもなる。実際、僕は転校しても、すぐに馴染なじめましたからね。でも、大人はそうはいかない。お母さんは人見知りしないとはいえ、新しい土地でいちから仕事を探して生活をはじめなければならなかった。……だから、本当にお母さんはすごいなって思います」

そう話す表情からは、両親へのよどみない愛情と感謝がまざまざと伝わってくる。

「小学生のときに通っていたクラブチームは家から車で40分くらいかかるんですけど、ほぼ毎日、お母さんが送り迎えしてくれました。練習開始が18時半くらいで、終わるともう21時くらいになっている。だから夕飯は、ほとんど外で食べてましたね。土、日が試合で、練習は週1回休みだったから、平日はほぼそのサイクル。そのときは当たり前だと思っていましたけど、今思うと、自分を中心に全部の時間が回っていて、両親は二人きりの時間があまり持てなかったんだろうなって感じています。子どものときは、何も考えなかったけど、両親が僕に費やしてくれたことによる犠牲はあったと思う。子どもの夢を支援をしてくれるのが親というのはあるかもしれない。だけど、僕のためによくそれだけの決断をしてくれたなって思います。ユースに昇格して、寮で生活するようになってからは、なおさら感謝の気持ちは強くなりましたね」

ただ、母親と二人で鹿嶋に引っ越した当時の彼は、多感な中学生で、思春期であり、反抗期でもあった。だから、思ってもないことを口走り、母親を傷つけてしまったこともあったという。そんなとき、しかってくれたのは、離れて暮らしていても、やはり「ここぞ」の父・通孝さんだった。 (前編了)


取材・文=原田大輔(SCエディトリアル)
写真=佐野美樹

土居聖真(どい・しょうま)

1992年5月21日、山形県生まれ。MF。鹿島アントラーズジュニアユースのセレクションに合格し、12歳にして山形から鹿嶋へ移住。ユースを経て2011年にトップチームに昇格する。プロ3年目の2013年に出場機会を得ると、2014年には34試合8得点を記録し、主力へと成長。昨季はシーズン終盤にケガをしたが、復帰した今季も突破力を活かして、多くの得点に絡んでいる。



土居聖真選手のインタビュー後編は、
ただいま発売中の「モーニング」45号ですぐ読めます!
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