GIANT KILLING extra

【ファミリー~Jリーガーと家族 ②】 サンフレッチェ広島 森﨑和幸選手(前編)(2016/09/08)

『GIANT KILLING extra』の新しいインタビューシリーズが始まりました。

Jリーガーが語る、家族の物語《ファミリー》。いつも応援している選手たちの、普段見せない顔に、ぜひ出会ってください。

二人目の登場は、サンフレッチェ広島・森﨑和幸選手です。



僕が初めて彼女に会ったのは、森﨑和幸がオーバートレーニング症候群に陥った2006年だった。

取材で広島に滞在していた僕に、森﨑は重い腰を上げて会いに来てくれたのだ。ホテルのロビーにある小さなソファーに座ると、「気力がないんですよね。それにサッカー選手である自分じゃなくなりたい」と、苦悩を打ち明けてくれた。

そのとき、森﨑の横に座っていたのが、後に彼の妻となる志乃さんだった。彼女は真っ直ぐな眼差しで僕らの会話を聞き、深くうなずいていた。僕はそんな彼女を見て、芯の強そうな人だなと思ったことを鮮明に覚えている。


サッカーやめるか オレが死ぬか 選んでくれ

森﨑が志乃さんと出会ったのは、かつてのチームメイトでもあった駒野友一(現・アビスパ福岡)の結婚式だった。ともに新郎新婦の友人として披露宴の受付を担当したのがきっかけだった。

「実はお互い、第一印象は最悪だったんですよね」

森﨑は苦笑いを浮かべる。

「僕も(双子の弟の)浩司も受付の仕事を頼まれたのは初めてで、一応、教わった通りにやっていたんですけど、たくさん人が来て、気づいたら、ご祝儀袋が山積みになっちゃったんですよね。そうしたらいきなり志乃に『ちゃんとやってください!』って、かなり強い口調で怒られたんです。初対面なのに、何なのこの人って思いましたよね」

高校生にしてプロの試合に出場した森﨑は、双子のJリーガーということもあって、若い頃から広島ではかなり有名だった。

「来る人、来る人に写真撮ってくださいって言われて、コマ(駒野)の結婚式だから断るわけにもいかない。こっちはこっちで大変だったんですけどね(笑)。まあ、後から志乃に聞いた話では、もともとサッカー選手に対して良いイメージを持っていなかったみたいなんです。きっとチャラいんだろうなって。で、やっぱり頼まれた仕事もろくにできないって思ったらしいんです」

そんな第一印象最悪の二人が付き合うことになるのだから、未来は誰にも分からない。

「僕、だまされたんですよね。駒野夫妻にまんまと(笑)」

聞けば、後日、駒野から「一緒に受付をやってくれた子が、(カズを)気に入っているみたいだから連絡してあげて」と、志乃さんの電話番号を教えられたらしい。森﨑は「まさか」と半信半疑だったが、素直に従い電話を掛けてみた。少し世間話をすると、住んでいる場所が近いことが分かり、それならとお茶をすることになった。当時の志乃さんはサッカーに興味がなく、会ってみると仕事への共通する考え方や悩みについてなど、自然と会話は盛り上がった。

「話してみたら誤解が解けた。お互いにしっかり考えているんだなってことが分かったんですよね。マイナスだった分、一気にプラスに好転したという感じですかね」

後々、森﨑は知らされるのだが、駒野夫妻の、特に妻が、お似合いという理由で二人をくっつけようと本気で画策していたらしい。まんまとその狙いどおり、二人は付き合うことになったのだ。

しかし、順調に交際を重ねていた矢先、森﨑はオーバートレーニング症候群で試合どころか練習をも離脱する。

「気分転換した方がいいということになって、そのときは釣りばかり行ってましたね。志乃は何も言わず、付き合ってくれた。ほぼ会話もないのにですよ」

その後、ペトロヴィッチ監督(現・浦和レッズ)に出会い、「カズの好きにしていい」と言われたことで、森﨑は精神的にふっきれていくのだが、オーバートレーニング症候群になったその年に結婚した志乃さんの覚悟も相当なものだっただろう。

「結婚した後、『オレとよく結婚したよね?』って、志乃に聞いたことがあるんです。そうしたら結婚前に親にも聞かれたみたいなんですよね。『スポーツ選手と結婚したら、ケガをする可能性もあるし、体が動かなくなる可能性もある。それでも大丈夫なのか?』って。そのとき志乃は、『この人でいい。もし彼が、仕事ができなくなったら、私が代わりに働く』って即答してくれたみたいなんです」

結婚後、森﨑は二度ほど慢性疲労症候群により、長期離脱を余儀なくされる。そのたびに支えてくれたのが志乃さんだった。森﨑が唯一、すべてを打ち明けられる相手だった。だからこそ、苦しんだ末に森﨑は、こんな文面のメールを志乃さんに送った。

「オレがサッカーをやめるか、それともオレが死ぬか。志乃が選んでくれ」

彼が三度目の離脱をする2010年4月14日のことだった。(前編了)


取材・文=原田大輔(SCエディトリアル)
写真=佐野美樹

森﨑和幸(もりさき・かずゆき)

1981年5月9日、広島県生まれ。MF。サンフレッチェ広島のユースで育ち、高校3年生にしてJリーグデビュー。慢性疲労症候群などにより長期離脱した時期もあったが、双子の弟・浩司と共に広島一筋でプレーし、今季でプロ17年目を迎える。5月21日には史上14人目となるJ1通算400試合出場を達成した。



森﨑和幸選手のインタビュー後編は、
ただいま発売中の「モーニング」41号ですぐ読めます!
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